拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「だから、もしお父様たちで対処しきれなくとも、その時は私の口からもきっぱり否と伝えるつもりでいます。今回の件に関しては、最終的に双方の合意がないと成り立たないことですから、一方的な先方の主張は通りません」
「双方の合意……」
 それが正しく尊重されていたら、歴代のいとし子──聖女たちは涙をのまずに済んだだろう。
 憂慮する俺とは対照的に、ティーナはなにかが吹っ切れたような表情で語る。
「ファルザード様。私がこんなふうに考えられるようになったのは、あなたのおかげなんです。すごく感謝していて……、それで、今度は私があなたの役に立ちたい。きっと今、ファルザード様は大変な状況で立ち動いているはずで、そんなあなたの力になりたいと思うんです!」
 予想外の台詞に驚いて目を瞠る。
 もしかすると俺は、ティーナのことを見くびっていたのかもしれない。
 そんなつもりはなかったが、弱い者、守るべき者と決めつけて、勝手に先覚を気取っていた。驕っていたのは、俺だ。
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