拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「すまん、君には少しショッキングな話だったかもしれん。だが、不安に思わなくて大丈夫だ。俺は王都を空けることになるが、困った時に助けになると言ったあの言葉を反故にはしない。君のことは王都に残していく俺の腹心にしっかり伝えておく。なにかあれば、その者がすべていいように対処する。だから安心してくれ」
「いいえ、違うんです! 私は今、自分の不甲斐なさを痛感していて。本音を言えば、『一緒にアゼリアに行かせてほしい』と言いたいんです。でも、それを強行したとして、足手まといにしかならないことが分かり切っているから。あなたと違って、無力な自分が情けなくて……」
「馬鹿な、なにが無力なものか。こういうのは、適材適所と言うんだ。現状、アゼリア行きに俺以上の適任はいない。逆に、君の手がもっとも活かせる場所はここだ」
 前方に見えてきた孤児院と、その横手に広がる花畑を示しながら言い切ると、彼女が潤んだ瞳で俺を見つめる。熱を孕んだその目にドキリと鼓動が跳ねた。
「……ファルザード様」
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