拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 朱色に色づく唇がゆっくりと開く。彼女は俺になにを告げようとしているのか。そわそわと焦れる思いで彼女の言葉を待った。
「今回の一件で、再認識しました。私はあなたを──」
「あー、ティーナだ! わぁっ、ファルザード様もいるの!?」
 孤児院から出てきた子供たちに声をかけられて、ティーナはビクンと肩を揺らしながら唇を閉じてしまう。
 ……なんというタイミングの悪さだ。
 折もあろうに、ここで子供らとかち合うこともあるまいに。
 間の悪さを呪いながら、仕方なく子供たちに向き直る。孤児院の前の道を掃きに来たのだろう、ほうきと塵取りを手にした子供らの姿にため息が漏れた。
「最近全然来なかったじゃんか。ずいぶん久しぶり……って、なーんだ。今日は手ぶらかぁ。ちぇっ」
「ライアン! そういうのは思ってても、口に出すもんじゃないぞ!」
 ライアンの呟きを聞きつけたミリアが窘める。しかし、その台詞にも突っ込みどころが満載で、思わず苦笑が浮かぶ。
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