拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
第七章 しばしの別れと侯爵令嬢の決意
翌日。晩餐会で深夜近い時間に帰宅したお姉様とは、朝食の席でも顔を合わせることなく屋敷を出た。
少し肌寒かったのでケープのフードを被り、歩き慣れた道を行く。
道々で時々視線を感じたような気もしたが、すっぽりフードを被っていたのもあり、さほど意識することはなかった。
明らかな異変は、花畑の手入れを終えてミリアと花売りに出かけた先で起こった。なんと、いつも通り売り物の花を抱えてメーン通りに差しかかったところで、食堂の裏から飛び出してきたコック服の男性に突然生ごみを投げつけられたのだ。
「きゃぁ!」
「うわっ!?」
咄嗟に退いてなんとか頭から被る事態は避けられたが、ミリアは手にした薔薇を落としてしまい、地面の上で生ごみにまみれて無残な状態になっている。
男性は生ごみが入っていたであろうバケツを放ると、手近に立て掛けてあった掃除用具の中からほうきを選んで掴み上げ、私たちを威嚇するように振り上げる。
「お前たちが熱病の〝もと〟を撒き散らしているんだろう!? 街に出てくるんじゃねえ!」