拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 次いでもたらされた偏見に満ちた罵りに絶句する。
 過去には不衛生な環境が原因となって発生した病もあった。しかし、今回の熱病はそういった類のものではない。特にファルザード様から『正しい情報と対策』を聞かされていた私には、到底信じ難い言いがかりだ。
 なにより、孤児院の生活は裕福ではないけれど、衛生環境の維持にはしっかり配慮されている。ミリアの衣服にしても少しばかり丈が合っていなくともしっかり洗濯されているし、頭髪や肌も清潔に保たれているのだ。
「なんだと!?」
 怒って怒鳴り返そうとするミリアの袖を慌てて引いた。
 ほうきを手に直接脅かしてくるのは目の前の男性だけだが、悪いことに周囲からこちらに攻撃的な視線を向けてくるのは、ひとりやふたりではない。なぜ、一日二日でこうも街の人たちの反応が変わってしまったのかは分からない。
 いずれにせよ、ここで過剰に事を荒立てるのはうまくない。
「駄目よ、ミリア!」
「ハッ! 病のもとの花なんか、二度と売りに来るんじゃねえぞ!」
< 190 / 307 >

この作品をシェア

pagetop