拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「なっ、小汚い小娘が知ったような口を利くな!」
「汚いのはどっちだよ!? あんた料理人だろう? コック帽とエプロンのまま外に出て来て、ベタベタいろんな物を触ってる。そこに病の〝もと〟が付いてない保証はないぞ。その手でそのまま料理を出したら、あんたの方が〝病のもと〟だ!」
 手洗いをはじめとする衛生管理の徹底もまた、ファルザード様から伝え聞き、私がミリアや子供たちに話していた。院内での感染予防に役立てばとの思いからだった。
 もちろんミリアの主張は正しいのだ。けれど、これ以上はまずい。
「すみません! すぐに立ち去りますので! さぁ、行きましょう、ミリア」
 口早に謝罪を告げ、ミリアの手を引いて駆けだそうとした。しかし男性は激昂し、ほうきを振りかぶった。
「ふざけるなぁあ!」
 っ! ぶたれる!
 咄嗟にミリアの上に覆い被さる。
「やめろっ!」
『みゅーあ《ダメーッ!》』
 耳に馴染んだふたつの声が制止を叫ぶのを聞いた。その直後──。
「ぅおっ!? イッ、イテテテテッ!」
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