拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「城で王妃様にお会いしたら、先日の茶会でお前が粗相した侍女をさりげなく庇ったところを見ていらっしゃったらしくてな。それはそれは褒めていらっしゃった」
「まぁまぁ! 王妃様にお褒めの言葉をいただけるなんて、なんて素晴らしいんでしょう」
 居間と間続きのテラスで趣味の刺繍を楽しんでいたお母様が即座に反応し、喜色に弾んだ声をあげた。
 ところが、当のお姉様の反応は実にあっさりしたもので。
「いやだわ、お父様もお母様もオーバーよ。……ねぇ、そこのあなた、お茶をお願いできるかしら? お父様はお勤めから帰られたばかりだから、リラックスできるようにハーブブレンドの紅茶にしてちょうだいな」
 お姉様は困ったように微笑してピアノの前から立ち上がると、控えていた使用人にそつなく人数分のお茶の用意を言いつける。
「さぁ、お父様。今日は早くから議会に参加されてお疲れでしょう。こちらでお茶でも飲んで、まずはひと息つきませんこと?」
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