拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 これまで少女が示した区域に行ったことはなかったが躊躇わずに頷き、少女にひと言断ってから先ほど置きっぱなしにした荷物とラーラが入ったバスケットを取りに戻る。
「お待たせ。さぁ、行きましょうか」
 腕にバスケットをぶら下げ、さらに両手いっぱいに紙袋を抱えて戻ってきた私に、少女は目を丸くした。
「ずいぶん大荷物だな。それに、ネコまでいるのかよ?」
 少女にバスケットの中をズイッと覗き込まれ、ラーラは驚いたように体をビクつかせた。
「うわ、艶々だ! なぁ? 撫でてもいい?」
 ラーラは一瞬迷うように金色の瞳をさ迷わせたが、すぐにスッと目を閉じた。
 ……うそ、珍しい。
『みゅー』
 そのまま小さくひと鳴きし、少女に背中を差し出すラーラを、私は意外な思いで見つめた。
 少女は嬉しそうにそっとラーラの背中を撫でた。
「いい子だな。それにふわふわだ……ふふっ。ありがと」
『みゅー』
 少女は二度ほどラーラの背中を往復させてから、名残惜しそうに手を引いた。
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