拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 気がかりではあったが、出発を目前に控えた俺が自ら調査に動くことは物理的に不可能だった。代わりに、悪意ある噂の出所含め、ティーナの身辺については腹心のヘサームに一任してきた。奴ならば、なにかあってもうまく対処してくれているだろうが……。
 実は、こちらに来てからまだ一度もヘサームからの報告がきていなかった。気になりつつ、今なお物流が滞りがちな現状と、俺不在の中でヘサームも多忙にしているのだろうと想像すれば納得もできた。ただし念には念を入れ、アゼリアに帯同した側役を王都に向けて単騎で発たせたのが昨日のことだ。
< 215 / 307 >

この作品をシェア

pagetop