拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「そうなんですよ! その聖女様ですが、それはもう天から舞い下りた天女のごとく麗しく、病状や身分、見目などにかかわらず、すべてにおいて分け隔てなく優しい看護を提供しているそうで。汚れ仕事や力仕事も率先して熟して、嫌な顔ひとつしないって話です。そうしたら、いい影響は他の介助者にも波及して、〝死の館〟全体の看護の質がめちゃめちゃ上がったらしいですよ。おかげで死を待つばかりの患者たちがみるみる回復してるって、もっぱらの評判です」
 人材不足のため、補佐官として急遽現地で採用した青年は、夢見がちに聖女について語る。
 多分に誇張やゾーイ自身の妄想が含まれていそうな報告ではあるが、件の女性の活動それ自体は称賛に値する内容だ。
「ほう、素晴らしい人材を採用できたな」
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