拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「いえ、それが町が雇用した人じゃないんですよ。話によると、無給で従事しているんだとか。しかもその聖女様、町にやって来てから丸一週間、ずっと〝死の館〟に詰めっ放しで働いているらしくって。いやぁ、ここまでくるとその聖女様の正体、本当に天から降って来た女神様なんじゃないでしょうか。あぁ、でも熱心なのはいいですけど、倒れちゃわないか心配ですよね」
 もともと町長に付いて補助業務をしていたというゾーイを無能とは思わないが、おしゃべりなところと上長への報告に主観が交ざりすぎるのが難点だった。もっとも、地方の町にあってはこのくらい砕けた関係が普通なのかもしれないが。
「一週間前に来た? なんだ、その女性は町の住人ではないのか?」
「違うようです。なんでも王都からやって来たとか。王都の貴族のお嬢様かぁ、きっと気品あふれる女性なんでしょうね」
「貴族だと? しかもお嬢様と言ったな、若いのか?」
「物資を届けに行った男が尋ねたら、本人が『もうじき十七歳になる』と答えたようです。爵位までは分かりませんが」
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