拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 そうしてやっと物流機能に回復の目途が立ち、明日の診療所視察を予定に捻じ込んだのが昨晩……いや、日付代わって今日の未明のことだ。
「ええ。明日の午前一番に……って、あー! さては閣下もその聖女様に興味津々なんですね!? 分かります! 分かりますよ、その気持ち。それであの、その視察って僕も連れてってくださるんですよね!? いえ、ぜひ同行させてください!」
 姦しいゾーイを無視し、朝から温め続けていた椅子から立った。
「……行ってくる」
 なぜか無性に気になった。こうなればもう、多少の無理を押してでも行かないと気持ちが収まらない。
「は?」
「今から診療所に向かう」
「え、え? ぇえええっ!? あの、でも重症患者の移送用に貸し出してしまったので、今は馬車が出払っているかとっ」
 素っ頓狂な叫びをあげつつ、厩の状況をすかさず報せてくるあたり有能と言えるのか。
「単騎で十分だ」
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