拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 たてがみに掴まりながら俺の前に乗っていたザイオンが、ピョンと地面に着地する。俺も続いて馬を降り、手近な樹木に繋いでから、診療所の正面玄関に向かう。
 その際、建物の横手に設えられた洗濯場で、洗われた大量のシーツと病衣、肌着などが物干し竿で揺れているのが見えた。
 俺の赴任前には既に、ここは建物に入りきらない患者であふれ、満足な看病はおろか、まともに衣食を提供することすら困難な状況だった。報告でここの窮状を知っていた俺は、赴任前から臨時診療所の増設に動き、移動可能な患者をそちらに転所させる対応を取った。
 新規患者の対応も新設した診療所で担うようにし、ここの機能回復を図った。結果的に、ここは現在重症患者専用の診療所という位置づけで機能していた。加えて赴任後に、物資の追加手配と介助職員の増員を行ったのだが、正しく物資が支給され、それを洗う人手も確保されている様子にホッとする。
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