拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 これはひとえに、彼女のことはヘサームに託してきたから大丈夫だろうと、慢心していた俺の落ち度。こんな事態を許してしまった自分自身が情けなく、やりきれない思いだった。
「なんてことだ。君の意に反して連れてこられたのなら、その相手が誰であろうとこれはれっきとした犯罪だ」
 低く呻くように漏らす俺に、彼女は緩く首を横に振る。
「私にとって、ここに来た経緯というのはあまり重要ではありません。患者さんたちのために毎日全力で奮闘する忙しくも充実したここでの生活に、私は満足しています。……それに、本音を言うと私自身打算もあって」
「打算?」
 ここで飛び出すには不釣り合いにも思える単語に首を捻る。
「ここがあなたの赴任先と知ったから。ここにいれば、いつかお会いできると思いました。やっと、お会いできた」
 ティーナはチラリと俺を見上げ、照れくさそうに告げた。
「ティーナ……!」
 その瞬間、圧倒的な愛おしさがあふれ迸る。堪えきれず、彼女に向かって両手を広げて踏み出して、嫋やかな細い体を──。
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