拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 俺は静かに続く彼女の言葉に耳を傾けた。
「これはファルザード様が、正確なデータと共に適正な感染対策を示してくださったからこそです。それに応援の人員も補充されて、物資もどんどん届くようになって。今では完璧とはいかずとも、患者さんが回復に専年できる環境を整えてあげられるようになりました。そうしたら、患者さんがどんどん回復傾向に転じて。私、嬉しくって。全部、ファルザード様の的確な采配のおかげです」
「馬鹿な、俺は所詮手回しだけだ。患者に触れ、身の回りを整えて、心身を健やかに維持したのは君をはじめとする介助者たちだ。なにより君は、患者を生かすだけじゃない。率先して声をかけ笑顔を向け、病のみならず、それによって生じる偏見や差別に苦しんでいたその心を健康にした。ここでの君の功績は計り知れない」
「そんな。さすがに、持ち上げすぎです」
「いいや。誰にでもできることじゃない。君だから、成し得た。すごいのは俺じゃない、君だ」
 彼女の瞳がジュンッと涙の膜で潤む。
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