拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「ふーん。普通はさ、みんな孤児院育ちって分かると、途端に嫌な顔をする。でも、ティーナは全然態度を変えない。優しいんだな!」
 そう言って嬉しそうに笑うミリアに、私は曖昧に微笑み返すしかできなかった。
 ……私は優しくなんかない。ただ、私にとって孤児院もそこで暮らす子供たちの存在も、膜一枚隔てた向こう側の遠い世界のことのようでどこか現実味がなくて。
 もちろん差別感情などはないのだ。けれど、よくも悪くも無関心だったということだ。
「そうすると、花は先生方の指示で売っていたの?」
 私はさりげなく話題を移す。それにミリアは首を横に振った。
「違う。先生たちは関係ない。あたしが思いついて、勝手にやりだした」
 あの品質で対価を得るのは難しいと思ったが、なるほど。ミリアの独断だったようだ。
「ほら。あたしのワンピースもさ、つんつるてんだろ?」
 ミリアは紙袋を持つのと逆の手で、スカートの裾をピンと引っ張って見せる。
 話の流れとミリアの行動が結びつかず、私は小さく首を傾げた。
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