拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「ほんと言うと、初めて身ひとつでここに来た時は、足が震えました。だってここは、王都では目にしたこともない……それこそ、いつ命の灯が消えたっておかしくないような身体状態の患者さんがひしめいていて。正直、怖かったし、心細かった」
 彼女の告白に胸が軋む。そんな恐怖の前面に、彼女をひとり立たせてしまったことに、胸が押し潰されそうな思いがした。
「実は、私をここに送ってきてくれた方が『望むなら見逃す』と、最後の最後で逃げ道をくれました。命令に背いてそんなことをすれば、彼自身どうなるかだって分からないのに」
 命令……なるほど、彼女をここに閉じ込めるよう指示したのはジェニスのようだ。マリエンヌが裏から糸を引いていたのかまでは分からないが。
「怖かったのだろう? それなのに、逃げようとは思わなかったのか?」
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