拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 こちらに向かってくる馬は二頭。その馬上には側役と、ヘサームが斥候役や諜者として重用している男の姿があった。
 側役は王都に着く前に、道中でヘサームからの報告を携えたこの使者と行き合ったか。
 ヘサームがこの男を早馬で駆らせる事態……。ひどく嫌な予感がした。
「ここにいる! なにがあった?」
 ふたりは俺の前までやって来てヒラリと馬を下りる。簡易式の礼を取ると、使者の方がすぐに口を開いた。
「私から報告させていただきます。感染の急拡大に伴い、王都で体制批判の大規模デモが発生。それにジェニス殿下が王太子軍を率いての武力制圧で対抗。王都では血を血で洗う事態になっております」
 俺の横でティーナがヒュッと息をのむ。
「なんだと!? いくら病床にあるとはいえ、陛下とエイムズ卿はなぜそんな事態を静観している!?」
「国民には伏せられおりますが、デモ発生の時点で陛下が危篤。エイムズ卿も陛下にかかりきりの状態の中、ジェニス殿下が単独で動かれました」
 っ! なんてことだ!
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