拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「デモ発生の直後より、エイムズ卿が兵を引かせるようジェニス殿下の説得にあたっています。また、ヘサーム様は王都に残る閣下の私兵を指揮し、双方の衝突を止めるべく動かれております。同時に、民衆からの支持が篤いシェルフォード侯爵を、仲裁役として民衆側に派遣。これにより、大規模衝突はいったんの均衡を保っています」
 事態は最悪だが、その中でも取り得る最善の策が正しく取られている。ヘサームの辣腕だ。
「そうか、初動としては文句の付け所のない対応だ。後は、エイムズ卿の説得さえうまくいけば……」
 ここで、これまで口を噤んでいた側役が声を発した。
「ファルザード様、王都に戻られませんか?」
「なんだと?」
「民衆が求めているのは『ファルザード王』。そして、デモ参加者は『正当なる王位継承者、グレンバラ公爵を玉座に』をスローガンに叫んでいます。此度の武力制圧で、民の心は完全にジェニス殿下から離れました。正当な王位継承者として、王都に戻られませんか?」
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