拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
第九章 正当なる王位継承者の帰還

 討議は、夜更け近くまで及んだ。
 ……これで、ひと通り打てる手は打ったはず。
 この上は、王都のエイムズ卿とヘサームに任せる他ない。
 ここで決まった対策案は書面に認め、明日明け方に再び王都に向けて発つ使者に託した。使者と側役のふたりは、既に集会場の空き部屋に下がらせている。
 対策本部には、俺とザイオンだけが残っていた。夜の静寂の中、書類束がうず高く積み上がるデスクで灯火を頼りに、各所にあてた指示書の続きを仕上げていく。
 ──コンコン。
 対策本部の扉がノックされた。俺の足もとで丸まっていたザイオンが大仰なほど体を揺らし、ガバッと扉を振り向いた。
 こんな時間に珍しいな。
「どうした? なにがあった?」
「あの! 閣下に来客が……っ」
 扉越しに問えば、焦った様子でゾーイが答えた。その声は、彼の心の動揺を映してか裏返っている。
 俺に来客? ……誰だ?
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