拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「たしかに少し窮屈そうね」
「だろ。うちの孤児院の台所事情じゃ食うのが最優先で、なかなか着る物にまで手が回らないんだよ。それでチビたちの中にはボロ布に包まってるやつもいる。そいつらに、まともに服くらい着せてやりたいなって思ってさ。たまたま敷地の中に花畑があって元手もかかんないし、うまくすれば古着代くらい稼げるかもしれないだろ?」
「その花畑はみんなで手入れしているの?」
「ううん。何年か前に植えられて放置されてるのが、そのまま自生してて……あ、ちょうど見えてきた! あそこだよ! あそこの花畑で摘んだ花を売ってるんだ」
 ミリアの指差した先に目を向けたら、木立の合間から古びれた印象の木造家屋が見えた。
 さらに足を進め、その全体像が浮かび上がってくる。ミリアの言う花畑らしき一角も確認できた。
 敷地はそれなりに広いが、孤児院の建物自体はあまり大きくなさそうだった。壁や屋根の傷みが激しく、正直うちの厩舎の方がよほど立派な造りをしていた。
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