拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 いずれにせよ、この男がわざわざ俺に報告を上げてくる時点で、面会の必要性があるということ。この男が有能かは悩ましいが、最低限の判断力は備えているのだ。
「そのまま通せ。お前はもう、下がっていい」
 そうなると、この男を来訪者との間に入れてやり取りを重ねる方がまどろっこしい。さっさと来訪者本人と面会した方が建設的だ。
「え、えぇえっ!? 僕、同席させてもらえないんですかぁあっ!?」
 なぜかゾーイが悲愴感たっぷりに叫ぶ。疲労感を増幅させる男の反応をうっとうしく思いながら、特大のため息と共に撥ね付ける。
「二度言わせるな。いいからさっさと来客を連れてこい」
「……はい。……聖女様。そういうことですので、おひとりで中にどうぞ」
 なっ!? 聖女だと!?
 ──キィイイイ。
「失礼します」
 遠慮がちに扉が開き、室内に身を滑らせたのは──。
「ティーナ……!」
 夕方別れたばかりの彼女が、どうしてこんな時間にここにいるのか。俺の内心の動揺は激しかった。
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