拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「いえ。カロンさんは、私をここに送ってくださった足でそのまま王都に戻ると言って、すぐに行ってしまいました。もともと私を診療所に届けたらすぐに戻れという指示だったそうです。けれど、男手が不足する診療所の様子に業を煮やして、力仕事を主に今日まで働いてくださっていて」
「そうか……」
 このタイミングで王都に発ったのは、俺たちの会話でデモの件を耳にしたからだろう。
 カロンというその男は、いったいどういう気で主の命に背いてまでティーナに協力してきたのか。あるいは、身も心も美しい彼女に懸想していたのだろうか。考えるだけで悪心がした。
 ……いかん。今は、醜い嫉妬に身を焼いている時ではない。
「それで、俺に話と言うのは?」
 彼女と向かい合わせになるようにデスクの椅子をずらし、対面で腰掛けて切り出す。
「お話する前に、まず謝罪を伝えさせてください」
「謝罪?」
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