拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「え、ファルザード様が弱虫ですか!?」
「ああ。だが、君がいてくれるなら、きっと俺は歩いてゆける」
 ひと呼吸の間を置いて、目を真ん丸にする彼女に告げる。
「王とは孤高にして孤独だ。だが、そんな玉座も君と並んで座るなら悪くない。……ティーナ、俺は遠からず王位に就く。その時、どうか『ファルザード王』の隣に座ってほしい」
 真っ直ぐに俺を見つめるティーナの目から、幾筋もの透明な雫が伝う。涙に濡れてなお、彼女は奇跡みたいに美しい。
 果たして彼女からは、どんな答えが返るのか。
 彼女のサクランボの色をした唇が、小刻みに震えながらゆっくりと開くのを、息をのんで見つめた。

◇◇◇

「どうか『ファルザード王』の隣に座ってほしい」
 ファルザード様から告げられた瞬間、熱い歓喜が胸を焼いた。
 目には涙があふれ、収まりきらないそれらが球を結んで頬を伝っていった。
 彼からの求婚に対する純粋な喜び。王位奪還を決意した彼への敬服。あらゆる感情が胸に交錯しての涙だった。
「……喜んで」
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