拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 体の内側から洗われていくかのような錯覚。まるで自分が清らかな存在に新たに生まれ変わったみたいな心地がした。
 光のベールが夜空に溶けて消え去った後も、目と心に美しい光の余韻が残る。辺りは静謐な空気に満たされていた。
 ファルザード様が夜空に掲げていた両手を下ろし、ホゥッと大きくひと息ついてから、ザイオンに視線を向けた。
「ザイオン、恩に着る」
『ニャー《なに、こんなのは朝飯前だ》』
 ファルザード様に軽い調子で答えるザイオンだが、その表情からはやり切ったという満足感が垣間見えた。
 肌に感じる空気がまるで違っていた。聞かずとも〝病のもと〟が消滅したことを直感的に知った。
 すかさずラーラがザイオンに駆け寄る。
『みゅーぁ《やるじゃん、おじちゃん!》』
『ニャッ《なっ! だから我をおじちゃんと呼ぶでない!》』
『みゅー《うん。本当は、見直した。すごかったよ、ザイオン》』
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