拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 ラーラの素直な賛辞に、ザイオンはピキンッと硬直していた。一見尊大で不愛想なザイオンが、実は純情なハートの持ち主だというのは、ここにいる私たちだけの共通認識だ。
 ここでふと、ファルザード様と目線が合う。大きな魔力を使った直後だからだろう、その頬はやや紅潮し、アメジストの瞳はいつもより強い光を宿して輝く。
 どことなく艶めいたその姿に、胸がときめく。見ていただけの私の頬にまで、熱が上ってくるのを感じた。
「ファルザード様、素晴らしい瞬間に立ち会わせてもらったことに感謝します。まるで、夢でも見ているかのようでした」
 それくらい情緒的で心に深く響く、貴重で得難い時間だった。
 ファルザード様は私の言葉に少し照れくさそうに微笑んで、すぐに表情を引き締めて口を開く。
< 256 / 307 >

この作品をシェア

pagetop