拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 その後、ファルザード様は夜間ではあったが補佐官や町長らを緊急で招集し、現状と町の今後について説明した。
 深更の空に広がる神秘のベールは全国民が目撃者であり、かつ、体感者でもある。前提としてファルザード様から語られた『〝病のもと〟の死滅』という突飛な内容を、笑う者はいなかった。
 ファルザード様とザイオンの起こした奇跡に畏敬尊信の念を示し、彼が提示した今後の指針についても順守を約束してくれた。こうして対策本部の機能は速やかに、正しく現地の指導者らの手に引き継がれた。
 そこから東の空が白んでくるのを横目に見つつ、大急ぎで帰還の準備を整え、なんとか日の出と共にアゼリアの町を出発することができた。もともとヘサームさん宛ての親書を携えて王都に帰る予定だった使者と、ファルザード様の側役も一緒にアゼリアを後にした。
 王都まではスピードを重視して騎馬での帰還だ。
「ゾーイさん、とても有能な方でしたね」
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