拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
第十章 浮かび上がった姉妹の軋轢

 王都に帰還した時、デモは既に鎮まっていた。
 それは単に、ヘサームさんやエイムズ卿の奮闘ばかりが理由ではなく──。
「ファルザードよ、よく戻った。また、これまで儂がそなたにした酷い仕打ちの数々、誠に申し訳なかった。遅すぎるくらいだか、儂は退位を決め、既に国民に公表した」
 通された王の私室。入室直後にかけられた陛下からの第一声は、こうだった。
 デモが鎮静した最大の要因は、陛下が国民に向けた退位宣言にあったのだ。
 小一時間ほど前。帰還した私たちが大規模デモと、その後の武力制圧の中心地となった中央広場の横を進んでいると、国王陛下からの親書を携えた使者が接触してきた。陛下がファルザード様との面会を希望しているという。ファルザード様はそれを許諾し、側役たちふたりを先にヘサームさんのもとに向かわせることにした。
 そうして使者に伴われ、その足で訪れた王城でファルザード様と共に面会した国王陛下は、聞こえてくる悪評とは別人のような殊勝な態度でファルザード様に頭を下げてみせた。
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