拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「十三年前、正当な王位継承者たるそなたから儂が強引に玉座を奪った。けっして賢王にはなれなかったが、そなたやエイムズ卿の力添えもあってなんとか体裁を保ってきた。そのつもりだった。……だが、愚かな儂は、我が子の養育をも誤った。その付けが回り、王国は崩壊に瀕している。遅すぎることは百も承知。だが、どうかこの国をそなたの手で立て直してはくれまいか」
「謹んでお受けいたします」
 ファルザード様の答えに、陛下はホッとした様子を見せた。
「ただし、陛下からの譲位は正当な手順を踏んで行います。移譲期間に王国法典に則った最短である一年を設け、正式な陛下の退位式と私の戴冠式をもって、王位をもらい受けましょう」
「なぜだ!? 王国史に儂の名は不要だ。国民とて、儂とジェニスの即刻の王籍除名をもって、そなたの世に移行することを望んでおろう」
 続くファルザード様の発言に、陛下は狼狽していた。
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