拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 程度の差はあれど、総じて王家の面々は魔力が高い。現にジェニス殿下は、私のことをひと目でいとし子だと見抜いた。陛下にも、それと分かったようだった。
 ちなみに、ファルザード様が陛下やジェニス殿下、他の王家の面々にいとし子である事実が、ずっとバレずにきたのには訳がある。これは彼自身から聞いたことだ。彼がザイオンの加護を得たのは、まだ物心がつくかつかぬかの頃だったらしい。ひと目でその変化に気づいたのは、ひと際強い魔力を持っていた彼のお母様で、幼いファルザード様に己の持ち得る魔力のすべてを注いで目くらましをかけたのだという。
 お母様は彼が十歳の時に亡くなったが、それ以降もお母様の魔力がファルザード様に目くらましをかけ続けているのだそうだ。
 魔力は、想いの強さに多大な影響を受ける。これを聞いた時、私は彼のお母様が我が子に向けた愛の大きさに頭が下がる思いだった。
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