拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 ダメージを負うとしたら、ファルザード様に掴まれた手首だと思うのだ。だけどあの時も、ラーラの猫パンチがあたった場所を庇っているように見えたっけ。ヘンね。
 不思議に思ったけれど、今はラーラを無事に助け出せたことに頭も胸もいっぱいで、ただでさえまともに物を考え難い。
『ふみゅ《あちゃー。やっぱり加減が課題よね……ごめんね、おいちゃん?》』
 それに加えて、ファルザード様に抱き上げられている状況もあり、ザイオンの懐でラーラがこぼした呟きは私の耳を素通りした。
 ちなみに、屠殺も理由ある殺処分もなんら罪ではない。私たちは加害者と見せかけてその実、被害者である牧場主に心から謝罪を伝え、心づけを手渡して牧場を後にした。
 そしてファルザード様の読み通り、牧場にほど近い街道で、私たちは既に解放されていたミリアと無事に合流を果たした。ライアンはミリアの姿を目にした瞬間に駆けていき、きつく胸に抱きしめていた。ミリアは目を瞠り、次いで少し遠慮がちにその背中に腕を回していた。
< 278 / 307 >

この作品をシェア

pagetop