拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「君は愛されているな。もちろん、俺も君を──コホン。まぁ、とにかくラーラとミリアが無事でなによりだ」
 ファルザード様は、子供たちが好奇で目をキラキラさせて聞き耳を立てているのに気づくと、苦笑してこんなふうに締め括った。
 彼の言葉の続きを実際の声で聞くことはできなかったけれど、私を見つめる慈愛の籠もった眼差しからしっかりと感じ取れた。
 彼の愛に包まれて、イガイガに尖った心がまあるくなっていく。そんな心地がした。
「ミリア、ライアン、ファルザード様。ラーラにザイオンも、私もみんなのことが大好き! みんな、今日は本当にありがとう!」
 笑顔を作り心からの感謝を伝えれば、全員が笑顔を返してくれる。
 胸に温かさがじんわりと染みる。気持ちを完璧に切り替えることは困難だが、みんなに癒されて、確実に思考が前向きになっているのを感じた。
 帰路の車内はその後も、みんなの優しさと笑顔に満たされていた。
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