拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 事前にファルザード様から大まかに聞かされていたというのもあるが、私の中でお姉様に対する信頼が既に地に落ちていたからというのが大きい。
 デモ発生の頃にはジェニス殿下はすっかりお姉様に心酔し、頼りきっていたという。同時に彼は、ファルザード様を怖れ、怯えてもいた。そんな状況の中で、政治的決断を苦手とする殿下は、あろうことかお姉様に王太子権限の行使を許していたというのだ。
 そして王太子軍を動かしたのは、まさかのお姉様。世間の「ファルザード王」待望論の高まりにより、今度こそ私を排し王太子妃に収まれるという目論見が崩れそうな状況に焦ったお姉様が、独断で実行した。……いや、厳密には事後報告し、最終的にはジェニス殿下も同意した格好ではあるのだが。
 他にも、孤児院が熱病の発生源であるという噂も、私に纏わる不名誉な噂も、これらを吹聴して回ったのもお姉様。細かいところで言えば、ジェニス殿下に私の情夫の存在を囁いたのも、私を〝死の館〟に送るよう進言したのもお姉様だった。
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