拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
最終章 幸福な未来へ

 空が高く澄み渡り、木々の葉が新緑の色に染まる爽やかな初夏。
 デリスデン王国では戴冠式が執り行われ、国中が新国王誕生の歓喜に沸いた。
 その日の夜。新国王となった俺とティーナの姿は、デリスデン王城の地下深く、冷え冷えとした牢にあった。ティーナがまとう胸下から切り替えになったゆったりとしたデザインのドレスは、腹部がまろやかな弧を描いて僅かに盛り上がる。婚姻後ほどなく実を結んだ、ふたりの愛の結晶。
 木々の葉が緑から赤や黄色に色を変え、王国の大地が豊かな実りを迎える頃。俺は新たな宝を得ることになる。先の戴冠式ではティーナの懐妊も同時に公表したため、国民も二重の慶事を諸手を挙げて喜んでくれていた。
 俺は身重の妻の腰を抱いて牢の一番奥まで進み、鉄格子で覆われた個室の前で足を止めた。
「お姉様、体調が優れないと聞きました。お加減はいかがですか?」
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