拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 乳児にハチミツを与えてはいけない。これは保育に携わる者の間では、わりと広く知られていることらしい。俺も以前は知らなかったが、ティーナの懐妊に際して育児書を読み漁って知識を得ていた。
 だが、それがいったいどうしたというのか。
「でもね、私はあの時の一件を思い返すたび、侍女長も『殺す』だなんてオーバーに騒いだものだと呆れているのよ。だって、実際のところあげてもあげても死ななかったもの」
「なっ!?」
 続く言葉にギョッとして目を瞠る。
「あの騒動で、私は自分が毎日飲んでいるハニーミルクのハチミツであなたを消せるのだと知った。それからは毎日あなたの枕辺に通いつめて、それはもう熱心に含ませたの。けれど、あなたは何日経っても、何カ月経ってもピンピンしていた」
「貴様、なんということを……!」
 子供部屋という密室で、まだ三つかそこらの幼子が、妹の殺害を目論んでいようなど誰が考えられるだろうか。
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