拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 幼いティーナが晒されていた悪意。そのあまりのおぞましさに身震いした。同時に、今のマリエンヌからの予期せぬ告白でティーナが負ったであろう心の傷を憂いた。
 ところが、見下ろしたティーナは俺の予想に反して凪いだ瞳でマリエンヌを見つめていた。
「とはいえ、あなただって『生まれて』しまっただけなのよね。そう考えると、お母様も悪いわ。今のあなたみたいに膨らみ始めたお腹を愛おしげに撫でながら、私に向かって『あなたにきょうだいが生まれるのよ。いっぱい可愛がってあげてね』だなんて、おかしなことを言うんだもの」
 マリエンヌは昔を思い出すように、遠い目をして語る。
 一見では正気に思えるが、果たしてその心は本当に正常に機能をしているのか。俺には、分からなかった。
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