拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 彼女が長年苦労してきた症状。ティーナはこれまでマリエンヌがその元凶だなどと思い至りもしないようだったが、俺はやはりそうだったかと納得し、内心で毒づく。
 きつくマリエンヌを睨みつけ、ティーナを抱く腕に力を込めた。
「それなのに、どうして出来損ないがこの私を差し置いて王妃になんてなっているのよ!? そこは誰より、私にこそ相応しい場所なのにまんまと横取って……っ!」
 いくら非公式のこの接見が他ならぬティーナ自身のたっての希望とはいえ、さすがにこれ以上愛する妻への暴言は看過できない。
 俺がマリエンヌを咎めようと口を開きかけた、まさにその時。横からクイッと袖を引かれ、反射的に口を噤んだ。見れば、ティーナが俺の腕の中からスッと半歩前に踏み出して言い放つ。
「お姉様は勘違いをしています」
 けっして大きな声ではなかったのに、ティーナの凛とした声は無機質な牢にあって実際の音量以上に響いた。
 俺もマリエンヌも、見えない引力に引っ張られるようにティーナを見つめていた。
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