拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 栽培の知識や手順は屋敷の庭師さんから事細かに教わっており、たしかに専門性は高いはずだ。とはいえ、あげているのはただの水と既成の肥料なわけで。だから、これは特技なんて大層なものじゃない。
「いやいや、実際問題全然同じじゃないだろ。あたしたちがティーナと同じ道具を使って同じ手順でやったって、こうはならないもん」
 力強く言い切られてしまうと、それ以上の反論は難しい。なぜかは分からないが、たしかに私が直接手をかけて育てた花の方が生育がいいのだ。
 にしても、本当になにも変わったことなどしていないのだから、やはり単なる偶然としか言いようがない。
「……まぁいいや。それじゃ、今日の分を売りに行ってくるよ」
 今もミリアは花売りを続けている。初日の乱暴のこともあり、ひとりで行かせるのは心配で、私も毎日同行していた。
 ラーラが入ったバスケットをヒョイと腕にかけ、既に売り物の花を抱えて準備万端のミリアに続く。
「私も一緒に行くわ」
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