拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 売り物の花が鮮度を増したことで、花の売れ行きは上々だった。ありがたいことに、私たちの花を気に入って連日買いに来てくれる常連さんもできていた。
「あ。そういえばさ、一昨日の件、どうするか決めたのか? 今日あたり、受けるかどうか聞かれるんじゃないのか?」
 メーン通りに向かう道すがら、ミリアが思い出したように尋ねてきた。
 実は、私たちの常連になってくれた男性のひとりから、花の委託栽培を打診されていた。その中年男性──カルマンさんは広くビジネスを手がけていて、希少な花も取り扱っているのだという。
 ちょうど先頃品種改良に成功したばかりの新種の花があり、商品化のための栽培を始めたいと考えていたそうだが、育てるのが難しい性質の花のため、委託先の選定に難儀していたらしい。
 そんな時、日に日に生育状態のよくなる花を売りに来る私たちに、目を留めてくれたというわけだ。
「お受けしようと思っているわ」
 私の答えになぜかラーラはバスケットの中でペチンとひとつ、不服を示すかのように尻尾を打ち付けた。
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