拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 しなやかな着地を決めたザイオンは銀色の目で室内をゆうるりと眺め、パタンとひとつ尻尾を揺らした。その様子はどこか誇らしげで、この現状に満足しているように見えた。
「……ザイオン。なぜ?」
 俺は戦慄く唇を開き、掠れ掠れに問う。
『ニャー《なぜ? おかしなことを聞く。そなたは胸のうちであの男どもの排除を願っておったろう。ゆえに我が、それを叶えるべく闇魔力で援助した。なにが不満だ?》』
 ザイオンの言葉に、すっかり頭に血が昇った俺は声を荒らげる。
「たしかに、彼らを討つ必要があった。だけど、こんなやり方は望んでいない! うまくいけば、捕らえて生かす道だってあったはず。俺の心の内を読んで立ち回るにしたって、明らかにやり過ぎだ! そもそも俺はお前に助けてもらわなくても、自分の魔力だけで──」
『ニャー《いいや、そなたの魔力だけではままならなかった。少なくともそんなお荷物を守りながらでは、たとえ賊どもを撃退できても、そなたが怪我を負っていた》』
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