拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

　入念な情報取集の結果、行き着いたのが東地区だ。その中でもカルマンの目撃情報が多くあがったのは酒場や賭博場、娼館といったいかがわしげな夜の店々だった。連日連夜遊び人を演じ、一年かけて慎重に調査を進めた。
　そしてついに、これから一年に及ぶ調査の最終局面。カルマンの捕縛を実行すべく、今日ばかりは日の高い時間帯から行動していた。
『ニャー《真昼間の外出はずいぶんと久しいからな。おぉおぉ、太陽が目に染みる》』
　俺同様、すっかり夜型の生活に慣れてしまった様子のザイオンが、足もとで銀色の両目を細めながらこぼす。
「ザイオン。酒場に着いたら、一気に踏み込む。カルマンはかなり慎重な男だ、油断するな」
　既にカルマンを検挙できるだけの証拠は揃っていた。加えて数日前、彼は行きつけの酒場二階の宿泊部屋にやたら警戒しながら手下になにかを運び込ませ、そのまま自分も連日宿泊している。