拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
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メーン通り沿いのいつもの場所に着くと、既にカルマンさんが来ていた。私が委託栽培の話を受けさせてほしいと伝えたら、彼は満面の笑みで私に右手を差し出してきた。
おずおずと重ねた私の右手を彼はグッと握りしめ、『契約成立だ! きっと私たちは最高のビジネスパートナーになれる!』そう高らかに告げた。彼が口にした『契約成立』と『パートナー』の単語に、なぜか背筋をゾクリとしたものが走り抜けたように感じたが、きっと気のせいだろう。
その後は、とんとん拍子に話が進む。なんと、カルマンさんは私の承諾を見込んで既に種を用意してあるという。そして善は急げとばかりに、彼は私を自身の宿泊先へと伴った。
急な展開にさすがに驚いたけれど、『さっそく種を持ち帰って栽培を始めてほしい』と言われれば断ることはできなかった。ちなみに、これから残る花を売るミリアとはメーン通りで別れていた。
「え、ここですか?」
私はカルマンさんと連れ立って、今は灯りが消えてひっそりとした様相の酒場の前に辿り着いていた。