拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 けっして上品な店構えとは言えない。本音を言えば、多くのビジネスを手がける実業家が使うには、似つかわしくない店だと感じた。
 そんな私の内心を察したようにカルマンさんが告げる。
「ええ。見ての通り夜の商売の店ですが立地もいいですし、二階の宿泊部屋を常宿として便利に使わせてもらっています」
「あぁ、なるほど。メーン通りにもほど近い地区の中心地ですものね。たしかに、なにかと便利そうですね」
「それに宿泊部屋の方は案外綺麗なんです。それこそ、こうしてお客様をご案内できる程度には。さぁ、こちらです」
 そうしてカルマンさんに通された二階の部屋。
「少しお待ちください」
 彼は私を応接ソファに座らせると、そう言い残してクローゼットの方に消えた。しばらくして戻って来た彼の手には、三十センチ四方の木箱が握られていた。
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