拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 カルマンさんと会話を始めてから、なぜかラーラは目に見えて不機嫌そうだった。私のすぐ横に置いたバスケットの中からこちらをジトリと眺め、パッタンパッタンとずっと不満げに尻尾を打ち付けている。
 私が宥めるように襟足をこしょこしょと撫でてやっても、機嫌は直らなかった。
 ……どうしちゃったのかしら。いつもなら私がこうして撫でてあげると、喉を鳴らしてご機嫌になっちゃうのに。
「恩に着ます。とはいえ、その分あなたに手間をかけさせることになりますし……そうですね。もし秋撒きでもうまく収穫できたら、その時は二割多くお支払いしましょう」
「本当ですか!」
「もちろん二言はありませんよ」
 品種改良前のもととなる花は春撒きが主流だったと聞いているが、そういうことなら絶対に秋にも撒いて立派に育ててみせよう。私は内心で意気込んだ。
 ……あ。そう言えば。
「あの。ところで、これのもとになった花ってなんという花なんですか? 種からもとの花がまるで想像できないので、気になってしまって」
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