拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 そうなのだ。私自身それなりに植物には詳しいつもりでいたが、この種にはまったく馴染みがない。
 これが品種改良でできた新しい花だとしても、種の形はもとになった花とそう変わらないはずなのだが。よほど珍しい花なのか。
 私のこの質問に、なぜかカルマンさんは眉をひそめた。
「もとの花は……さて、なんという名だったかな。いや、お恥ずかしい。商売として取り扱ってはいるのですが、私自身花の種類についてはからっきしで」
 なんと。ここに着くまでの道すがらこの花の栽培方法やコツなどひと通り教えてくれたのは彼だ。その彼が、まさかもとの花の名前が分からないとは思わなかった。
 とはいえ、分からないものは仕方ない。
「まぁ、そうでしたか」
「ですが、そもそもが異国の珍しい花ですので。あまりもとの花のことは気にせず、目の前のこの花を育てるのに集中していただけたらありがたいです」
「もちろんです。全力で栽培にあたらせていただきますね」
「期待していますよ。……では、こちらを」
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