拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 そうして男性はカルマンさんが逃走できないよう拘束具の反対側をベッドの脚に留めつけてから、床の上に転がった件の木箱の他、文机の引き出しやトランクの中に入っていた書類などを軒並み回収していく。
 これはいったい何事?
 私は目の前で展開される一連の出来事を、瞬きすら忘れて見つめていた。
 ……そういえば、さっき男性は『麻薬草』とそう言っていなかったか。ふいに思い出した不穏な単語。
 まさか、私は麻薬栽培に加担させられそうになっていたのではないか。
 思い至った現実に肌がぞわりと粟立ち、身の内から湧き上がる恐怖に全身が震えだす。
 もしかして、私も何某かの罪に問われるのではないだろうか?
 お芝居のようだと眺めていた出来事が、一気に自分ごとになって降りかかる。
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