拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 男性たちはそれ以上追及することなく、リーダーらしき人がカルマンさんを、他のふたりが押収した書類などの一式を抱えて部屋を後にした。
 扉が閉まり、彼らの足音が完全に聞こえなくなったところで、男性が私に向き直って口を開いた。
「俺の部下たちが不躾に、すまなかった」
「そんな、困ります! 謝らないでくださいっ」
 そう。状況的に見れば、むしろ私も一緒に連行されていたっておかしくないのだ。少なくとも、聴取の対象になるのは避けられないだろうと思っていた。
 それなのに、なぜ初対面の私をこうもすんなり信用してくれるのか。
「そうか。ではティーナ、改めて俺はファルザード・グレンバラだ」
 彼がフッと口角を緩めて名乗る。
「えっ! グレンバラ公爵様!?」
 彼の口から飛び出した予想だにしない大物の名前に慄く。
 グレンバラ公爵といえば前国王の息子で、現国王のジンガルドは彼の叔父にあたる。彼は魔力にこそ恵まれなかったものの、利発な王子で将来の治世を嘱望されていたという。
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