拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「分からんか? そいつは君に、『自分はザイオンだ』と名乗ったのさ」
 横から、さも本人がそう言っているかのようにネコ語を代弁してみせるファルザード様に、自然と頬が緩む。
「まぁ、そうだったの。とっても素敵な名前ね。私はティーナよ、よろしくねザイオン」
 ところが笑顔の私とは対照的に、なぜかこちらを見つめるファルザード様の表情は硬い。気のせいかもしれないが、ザイオンの瞳にも落胆の色が浮かぶ。
 なに? 私、なにか失礼なことを言ったかしら。
「……なぁ、ティーナ。君の目にそいつはどう見えている?」
「どうって、しなやかで美しいネコちゃんよね。それに、とってもお利口そうだわ」
 答えた瞬間、ファルザード様とザイオンは揃って肩を落とした。
 えっ? 今度こそ、ガッカリしているのが丸わかりの反応。私は冷や水を浴びせかけられたような心地がした。
 褒めたつもりだったのだが、どこがダメだったのだろう。人の期待を裏切り、失望させてしまうのはとても辛い。
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