拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
『みゅー《闇のおじちゃん、うるちゃい》』
『クシャーッ《ぬぁあ、なんと小憎たらしいっっ。それに我はおじちゃんなどではなく、ザイオンだ!》』
「ふふふっ」
 ん? 横から聞こえてくる笑い声に気づいて視線を向けたら、ティーナが足もとでやいやいと言い合う二匹を眺めて頬を緩ませていた。
 こうして改めて見てみると、実に可愛らしい少女だと再認識させられる。
 華奢な肢体に、暖かな春の陽だまりを思わせるふわふわのストロベリーブロンド。髪と同色の長い睫毛に縁どられた瞳は澄んだ湖面を思わせる淡いブルーで、ちょっぴり垂れた目尻が文句なしの美貌を親しみやすい印象にしている。
 肌は日焼けを知らぬ白さだが、えくぼが浮かぶ頬は薄っすらと桃色に染まり、思わずつつきたくなる愛らしさだ。
 すると、俺の視線に気づいたのかティーナがふいにこちらを見た。どうやら無遠慮に見つめすぎてしまったらしい。
 慌てて謝罪を口にしかけるが、それよりも一瞬早くティーナが無邪気に俺に話を振った。
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