拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「二匹とも、すっかり仲良しになったみたいですね。いったい、どんなおしゃべりをしているんでしょう」
 ザイオンの加護により、俺には精霊の鳴き声が意味を持つ言葉として聞こえている。ラーラの鳴き声もまた然り。
 しかし、幼いラーラの加護が完璧に及んでいないため、ティーナにはそれが分からないのだ。彼女は俺と同じ運命を背負う存在ではあるが、同じ苦悩を分かち合える存在ではなかった。正直、肩透かしと言われればそうかもしれない。
 けれど思考の切り口を少し変えてみると、俺が彼女のよき理解者となり、支えとなってやることならできる。
 今後ラーラがどのように成長し、ティーナにどんな影響を及ぼすのか。あるいは現状のまま、なんら変化をもたらさないのか。事態がどう転ぶかは未知数だが、物心つくかつかないかの頃からいとし子として過ごしてきた俺の経験値は、きっとティーナの助けになるだろう。
 その役を果たせることを、存外前向きに捉えている自分がいた。
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